「ふつうのフィールドレコーディングじゃつまらない。」
ミカ・オヤネンが記録しているのは、“自然の音”そのものではない。
自然界の振動をいったん電気信号へと変換し、その電気の流れが立ち上げる気配を素材として扱っている。
量子化された信号は、編集段階で再び電気信号へ戻される。
そこで行われるのは、音を加工することではなく、電気の経路がどのように響き合うかを組み替える作業だ。
ときには過入力による副作用すら受け入れ、電気的な疎密の配置を丁寧に整えていく。
つまり、編集で“音をいじる”ことはしていない。
むしろ、電気の流れを通して、その場がかつて開いていた関係性そのものを再生成している。
その結果、リスナーが耳にするのは録音物ではない。
その場に居合わせたとき、空気が互いに触れ合っていた密度である。
ミカが届けたいものは、ただひとつ。
空気感である。
