雨音、どこか文学的な香りがする言葉だ。
辞書引きをすると辞書によって定義も多少異なるところがまた興味深い。
私が専門とするフィールドレコーディングからすると、雨自体に音はなく、降った雨がなにかにぶつかって立てた音(衝撃音/広義で反射音)が「雨音」と定義される。
では、ここから心地良い雨音を録るための雑学を説いていく。
雨音の場合、快不快を決める要素は雨の勢いと聞こえてくる音色(振動数/周波数+倍音)とその場の空気感(アンビエンス)が混ざったものといえよう。
ここでもう一度雨音の解釈を振り返る。
あま‐おと【雨音】
〘名〙降る雨が物に当たって立てる音。
明鏡国語辞典 第二版 (C) Kitahara Yasuo and Taishukan, 2011-2018
この辞書の定義が的を射ている。
そう、音を決めるもっとも大切な要素は当たる物だと察しがつくだろう。
重い物にぶつかれば鈍く反応し、振動が少なく低い音となる。
軽い物にぶつかれば素早く反応し、振動が増え高い音となる。
瓦屋根とトタン屋根による雨音の違いはそんなところとしておこう。
Listen to Field Recordings | Retro #24 byPG3A on hearthis.at
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次は、録音で腕とセンスの差がもっとも出る空気感について、本当は教えたくないことを晒そう。
夏の音、冬の音の音の違いは誰もが肌で知っている。
これまた私の見地からすると、屋外収録なら地面付近とその少しの上に温度差があるかないかで音波の屈折によって高周波(高音)の伝播の仕方が変わり、それをどう取り入れるかが肝となる。
実際には、温度差がないと横方向から抜けの良い音が伝播してくるが、雨が振っているとそれが少し吸収される。自然が相手ならどうしようもないが、擬音を作る場合に知っておきたいことだ。
誰がどう録ろうと大して変わらないフィールドレコーディングで差を付ける、または高い要求に応えるなら空気感をいかに扱うかを研究すると良いだろう。
じとじととした日に浮かんだヒントはこれまでだ。
筆:Mika Ojanen(ミカ・オヤネン)
琵琶湖畔にて、黒猫とカラスを従えし隠者。
カラスは昼のざわめきを、黒猫は夜の囁きを、私のもとへ運ぶ。
遣いの運ぶものによって、私の世界観もまた移ろう。