コラム:フィールドレコーディング「予兆」

九州地方は早くも梅雨入りしたそうだが、この時期に遭遇しやすいフィールドレコーディングにとっての好機を今回は紹介する。
それは、「雨が降る前のわずかな静寂」である。
これまでの経験から、それが発生する前には「予兆」があり、そのあとどうなるかを肌感覚と科学的根拠により説明させてもらう。

<肌感覚>
風がなく、鉛色の空が一面に広がり、遠くの山々は青く霞んで見える。周囲はまるで時間が止まったかのように静まり返り、その静けさの後、やがて激しい土砂降りが訪れる。

<科学的根拠>
気圧が安定して風が止み、レイリー散乱(詳細は省略)の影響で空や山の色合いが普段とは異なって見える。また、地表付近の気温が一定であるため、音の伝わり方が変わり、遠くの音がよく聞こえることがある。こうした状況下で急激な気圧変化が生じると、大気中の水蒸気が飽和し、局地的な激しい雨が降ることがある。

いずれにせよ、その不気味とも言える「予兆」に気づけば、「予兆の音」が録れることとなる。まずは、その現象を体感することだ。

肌感覚科学
無風気圧が安定
空・山の色が平時と異なるレイリー散乱の影響が大
静まりかえる(錯覚)
遠くの音の抜けが良い(現実)
温度差による高周波・音波の回折が起きていない

これは参考程度に留めてもらいたい。
実際には、これに土地による要因も絡む。


筆:Mika Ojanen(ミカ・オヤネン)
琵琶湖畔にて、黒猫とカラスを従えし隠者。
カラスは昼のざわめきを、黒猫は夜の囁きを、私のもとへ運ぶ。
遣いの運ぶものによって、私の世界観もまた移ろう。