プラクシス:フィールドレコーディング「予兆」

その日、その時、そこにあったのは、
それは、「雨が降る前のわずかな静寂」である。

その予兆は、フィールドレコーディング実践者として肌で知っている。
あとから加えた知識で、それが発生する条件も心得ている。

いずれにせよ、その不気味とも言える「予兆」に気づけば、「予兆の音」が録れることとなる。まずは、その現象を体感することだ。

<説明>
予兆は遠くの山々を見ることである程度予測できる。
レイリー散乱によって山肌が青くなり、大気の揺らぎも感じない状態になる。気圧計を持っていれば科学的にそれがわかるようになるが、肌感覚を持ち合わせていればそれは不要だ。しかし、持っていると案外面白い。
そして、遠くの山が霞んでいれば、そこは雨が降り出していることがわかる。観測地点にもやがて雨がやって来るので、RECはその束の間2~3分とし、あまり欲張らないことが実践者としてのアドバイスだ。

<補足>
ここでの「予兆の音」は物理的な音ではなく、音抜けが良くなった一時的な状態を静寂(しじま)とし、その間(ま)を「予兆の音」として定義している。そして、その定義は作品への意味づけとなる。


<読書案内>
John Cage: ”Silence”
これは日本人が知る「間(ま)」の意味を、異国の人がどう解釈し応用したのかを参考にするために読んでも悪くない本。正直、役立つのは読んだぞという書籍の権威だけ・・・
翻訳本は絶版の模様、図書館で探せるかもしれない。


筆:Mika Ojanen(ミカ・オヤネン)|フィールドレコーディング
カテゴリー:寄り道 / プラクシス