今回は、カセットデッキに音を吹き込みながら、それを DAW で同録する具体的な方法を紹介する。
デジカメ黎明期の画像が“エモい”と再評価されているが、そのカセット版だ。エモい音を求めるニュー・エイジ(死語)の諸氏にも、ぜひ実機のエモさを体験してもらい、さらには 音をプリントする というアートにも挑戦してほしい。
ここで扱う“成果物”は、単なる音源ではない。
テープという物質に刻まれた、プリントされたメディアそのもの だ。
音はその表層であり、作品はむしろ“記録された物体”として手元に残る。
必要なもの
●カセットデッキ
フル機能が備わる現行品は存在しないため、中古市場で整備済みの「3ヘッド/ドルビーB・C搭載/バイアス調整可能」なモデルを探してほしい。
3ヘッド機:録音しながら、テープを通った後の音(録音ヘッドで書き込まれた直後の実音)を同時に再生できる
2ヘッド機:録音した音は巻き戻さないと再生できない
つまり、3ヘッド機なら 一回の音出しで完結 する。
●カセットテープ
事実上、マクセル UR 一択。
往時の UDI などと比べると性能は低いが、現行で安定して入手できる。
接続
オーディオIF(OUT) → カセットデッキ(IN)
カセットデッキ(OUT) → オーディオIF(IN)
カセットデッキは 民生ラインレベル(-10 dBV)。
オーディオIF の入力を -10 dBV に設定すれば適正レベルになる。
OUT 側はそのままで問題ない。
バイアス調整
テープごとに異なる高域特性を補正するための調整。
自動調整機能(オートキャリブレーション)を持つ機種もあれば、手動で追い込む機種もある。
いずれにせよ、これができるデッキは高性能機の証。
ノイズリダクション
ドルビー、dbx など。
互換性の観点から、かつての標準は ドルビーB。
扱いやすさも含めてドルビーB搭載機が無難。
プリント方法
STEP 1:テープの限界測定
1 kHz のサイン波を DAW から送り、歪む直前 までカセットデッキ側の録音レベルを上げる。
往時の一般的な目安(オヤネンの記憶値)
ノーマル:+4 dB
ハイポジ:+6〜8 dB
メタル:+12 dB
より大きなレベルで録れるテープほど、ノイズが相対的に下がり高性能となる。
(歪む=音がジャリつき始める)
現行マクセル UR は、オヤネンの A&D(赤井)デッキでは +2 dB が限界。
これはテープ性能の低さを物語っている。
STEP 2:バイアス調整
デッキの手順に従って調整する。
自動調整機ならそのまま、手動機なら高域の落ち具合を見ながら追い込む。
準備が整ったら、カセットデッキのモニターを REC(録音モニター) に切り替える。
これで録音ヘッドの音を、再生ヘッドで同時に拾える(3ヘッド機のみ)。
ノイズリダクションの On/Off も忘れずに。
STEP 3:DAW 側の準備
カセットデッキに送る素材を ピークに合わせてノーマライズ。
IN トラックを作成し録音待機。
STEP 4:録音
カセットデッキ側で REC を開始し、録音可能位置まで空回し。
その後 DAW で Play & Rec。
完了
仕上がったテープは、単なる“音源”ではなく、
あなたがプリントした唯一無二のメディア として手元に残る。
オヤネンは、プリントしたテープをミュージアムに送って収蔵してもらおう、なんて妄想中。
