Facing the Phase

今回は、フィールドレコーディングの最高峰ワークフローと、創造的破壊という異なるアプローチを紹介する。

二つを同列に扱うのは、まずはまともな収録と編集が前提となるからだ。
音をキメる要素は何か。オヤネンの考えでは“位相”である。
一般的な定義では波形の時間的位置だが、ここでは疎と密の関係性として扱う。
スピーカーが前へ押し出せば密、後ろへ引けば疎。
この往復が一周期であり、疎密の移り変わりそのものが時間の質を形づくる。

フィールドレコーディングの最高峰ワークフローとは、この位相をいかに再現するかに尽きる。
ゆえに詳細は語らない。
キーワードはリニアフェイズ。あとは各自で研究されたし。

では、創造的破壊に移る。
こちらは単純だ。疎密をどこへ傾けるか、それだけで音はキマる。

波形を変形させるとは、時間をわずかに傾斜させる行為である。
正弦波を右肩上がりに歪めれば、疎密の重心は後ろへ沈み、音は低域へ寄る。
左肩上がりにすれば、疎密は前へ転がり、高域が鋭く立ち上がる。
矩形波なら、どちらの縁を残すかで輪郭がキマる。

倍音は疎密の細部に潜む“時間の粒”だ。
二倍音を少し遅らせれば、密が後ろへ引かれ、音は太く落ち着く。
三倍音を削れば、疎密の切り替わりは丸くなり、風のように柔らかくなる。
高次倍音を増やせば、疎密は細かく砕け、音は荒れ、輪郭は崩れる。

波形とは形ではなく、時間の偏りであり、
倍音とは色ではなく、疎密の粒度である。
どちらをどれだけ傾けるかで、音は別の相へ移行し、そこで初めてキマる。

フィールドレコーディングの素材も同じだ。
自然音の中に眠る疎密を、どこで引き伸ばし、どこで潰し、どこで偏らせるか。
それだけで、音は別の時間を生き始める。

通す素材は何でもいい。
鉄粉でも、紙片でも、創造的になればそれでいい。
あとは、それを探すだけだ。
──もちろん、ここでは触れないものもある。
音は、いつも少し遅れてやって来る。


Author:Mika Ojanen
カテゴリー:寄り道 / プラクシス